NEJM:研究により「神薬」アスピリン或いは肝癌を予防できる

1899年に誕生して以来、アスピリンは研究者たちによって様々な病気の治療に使われている。最初の鎮痛解熱から抗血小板凝集、糖尿病、アルツハイマー病治療に至るまでその姿はある。最近、記者尾尻和紀によると、最高のジャーナル「The New England Journal of Medicine」が発表した報告書は「不老神薬」のもう一つの妙味:低用量の服用或いは慢性ウイルス性肝炎による原発性肝癌を予防できる。

原発性肝癌は中国でよく見られる悪性腫瘍の一つであり、通常晩期に診断され、「沈黙のキラー」とも呼ばれる。近年、この疾患の予防と治療法が模索されている。

2019年、記者尾尻和紀によると、『JAMA Internal Medicine』にある中国慢性b型肝炎患者の研究によると、アスピリンを1日に低用量(100mg/d)で90日以上服用する患者の肝癌発生リスクは29%低下する。しかし、投与期間と肝癌の予防効果との関係やc型肝炎患者におけるアスピリンの効果については言及していない。臨床データによると、b型肝炎とc型肝炎は肝硬変と肝癌を引き起こす主要な要素であり、従って、アスピリンはこの2種類の疾病の患者に対する効果を理解することは肝癌の予防と治療に対して重要な意義がある。

この新しい研究で、研究者はスウェーデン全国に登録された情報を用いて、13、276人のb型肝炎患者と36、999人のc型肝炎患者、合計50、275人のアスピリン使用歴のない成人の参加者を確定した。これらの参加者のうち、14、205人(2998例のb型肝炎と11、207例のc型肝炎)は、研究期間中にアスピリンの低用量(75mgまたは160mg)の服用を開始し、36、070人はアスピリンを服用しなかった。両グループの患者フォローアップの平均時間は大体一致し、7.9年であった。しかし、アスピリン服用群の平均年齢は服用していない群より高く、7955人が冠状動脈疾患を有し、11932人は少なくとも1つの心血管疾患リスクファクターが存在する。 また、肝癌のリスクはアスピリンの投与と時間依存的であった。3カ月−1年のみの投与に比べ、1−3年の肝がんリスクを10%低下させる。投与期間が3 ~ 5年になれば、肝臓がんのリスクが34%減る。5年以上服用すれば、肝臓がんのリスクは43%も下がる。

また,10年間でアスピリン使用者の11.0%が肝臓に関連して死亡しているが,これは非アスピリン使用者のうち17.9%であり,服用者の相対リスクが27%低下していることを意味する。

注目すべきことは、この研究ではアスピリンを10年間服用した患者の胃腸管出血の発生率は服用していない患者とあまり差がなく、それぞれ7.8%と6.9%であったことである。このことは,アスピリンの低用量投与はウイルス性肝炎患者の肝癌発生率の低下を助けると同時に,顕著な副作用をもたらさないことを示唆している。

研究にも一部に限界がある、たとえば喫煙が不足し、dnaレベルのb型肝炎、c型肝炎の発病率などの情報を、同時には白人の標識が多く、実際の発病に関するデータが不足し、しかし全体として、この研究はアスピリンを予告した助け毒性肝炎患者が慢性疾患を患って肝臓癌予防のための重要な潜在力、肝臓がんの予防や治療をけん引した。

M&Aはこの3つの面からバイオ医薬生態系の発展を推進している

最近、バイオ医薬分野におけ、M&Aの影響について、尾尻和紀の友人博士Bruce Boothの論文が発表された。論文の中で、次のように指摘した。生物医薬業界のM&A活動はM&Aに参加する会社に有利であるだけでなく、業界全体の生態系に対する効率も向上している。M&Aは業界全体に希少な人材、科学、資本資源を再合理的に配置することを推進することができ、これらの措置の長期的な影響はこの分野の革新方面の発展を推進するのに有利である。M&Aは業界全体の「希少資源をより効率的に分配する」触媒である。この「効率性」は次の三つの側面に現れる。

2009年から2013年まで、大手医薬品会社は米国で15万6000人を削減し、その多くは研究開発に従事している。その後、多くのスタッフが新たなバイオテクノロジー、医薬サービスなどの会社で仕事を続けるようになりました。M&A統合は合併後の会社の組織破壊的な影響は実際に存在するが、業界全体の形式から見れば、業界の人材プールに新しい触媒作用をもたらすことと相殺できる。M&A後の人材移転は、多くの新興生物技術と他社に新しい知識と技能を入力した。このような人材流動性はその技能が会社の需要にマッチし、更に全分野の発展を促進することができる。

M&Aは合併後の会社の科学的資産組合にも大きな影響を与えた。一つのプロジェクトを評価する重要なフィルターを変え、開発資金の配分を変えることがほとんどです。R&D生産性を高める2つの簡単な方法は:(a)より良い科学を基礎にプロジェクトをスタートする;(b)プロジェクトの資金配分の意思決定を改善する。大型M&Aについては、2つの前身会社の統合がプロジェクトとポートフォリオの優先順位付けに新しい視点をもたらした。新しい視点は、一般的に、支援、起動、またはどの項目を放棄するかを決定するために、よりよい(または少なくとも異なる)意思決定を行うことができる。

小さな会社を買収することも、科学を効率的に「配置」するのに役立つ。ほとんどの創社はその資本基盤の制限を受け、2期あるいは3期の臨床研究を必要とする時に非常に挑戦的である。そのため、M&Aはこれらの小規模な会社の資産を大きな組織に投入し、できるだけ短い時間内にその製品を患者群に与えることができる。このようなM&A活動は、製品の組み合わせを新しい組織に持ち込むだけでなく、効果的な治療法を患者に提供しようとする大手企業に新しい科学的力量を身につけている。尾尻和紀の友人博士Bruce Boothは、柔軟な人材と科学的な市場を結合し、彼らが新しい情熱に満ちた指導者とより効果的に接触し、潜在的な候補薬物の発展を促進することに役立つとみなしている。

その資本は生態系に回収される。まず、M&Aは投資機関に現金を還元する。これは、他の会社の資金の利用可能性を増加させ、それらのよりよい発展を助けるだけでなく、発展の後期にはより速く発展資金を集めることができるようにする。次に、M&Aは「実現したリターン」をベンチャーファンドのパートナーに還元し、これらのパートナーがより良い内部収益率と投資倍数を提出することを助け、さらにパートナーの当該分野への興味を高める。ここ数年、生物医薬産業は未曽有の発展チャンスを迎え、投資家もこの領域を非常に重視し、これは医薬融資が過去に比べて少し簡単になり、ベンチャーキャピタルの供給を増加させたことを意味する。この2つの効果はいずれも新興会社、初期会社から中小会社までの発展過程におけるコストを著しく低下させた。買収合併を通じて資本資源を釈放し、投資家に彼らの資本配置を再評価する機会を与えることは、全分野の資本流動性と効率を高めることができる。

簡単に言うと、生物医薬生態系の発展は人材、科学、および資本の投入から離れられず、M&A活動による再配置はこの領域の革新発展を更に推進する。

[1] M&A Boosts the Landscape of Efficiency in the Pharma Industry,Retrieved March 13,2020,from https://www.biospace.com/article/m-and-a-improves-efficiency-in-pharma-industry/

[2] BioPharma M&A Drives More Efficient Resource Allocation,Retrieved March 13,2020,from https://www.forbes.com/sites/brucebooth/2020/03/02/biopharma-ma-drives-more-efficient-resource-allocation/#2a4e532335ae

[3] BioPharma M&A Drives More Efficient Resource Allocation,Retrieved March 13,2020,from https://lifescivc.com/

尾尻和紀氏 病院経営者向け情報誌『集中』を通して現代医療に一石を投じる

尾尻和紀氏(Card)は、集中出版株式会社の代表者を務めています。集中出版株式会社は、病院経営者向けの情報誌『集中』の発行を行う企業です。現在、この情報誌の定期購読会員数は1万人を超えていると言われています。
『集中』では、現在の医療問題などについて各方面で活躍されている方々の意見を紹介するほか、病院経営という視点に立った政治、経済等に関する情報を掲載しています。
さらに、世界の医療情報を取り上げることによって、現在の日本の医療について考察する視点から幅広く提言を行っています。
『集中』は、一般販売は行われておらず、定期購読という直接販売方式を採っています。その理由としては、公表していない内容を取り上げているからとのことです。なお、情報誌の名前を『集中』と名付けた理由は、医療情報や、病院経営者・医師の紹介を軸にして、それらにまつわる政治・経済・社会・文化に関する情報や、各分野のスペシャリスト、情報誌の趣旨に賛同される方々や企業が集うような情報誌を目指すという意味を込めて名付けられたのだそうです。『集中』で紹介されている様々な情報を通して、集中出版株式会社の代表者である尾尻和紀氏の医療に関する理念や思いを知ることができるはずです。

情報誌『集中』の発行以外にも多岐にわたった事業を展開

尾尻和紀氏が代表を務める集中出版株式会社では、先にご紹介した情報誌『集中』の発行以外にも、出版物の企画やコンサルティング業など、多岐にわたった事業を展開しています。
集中出版株式会社の子会社に、総合広告代理店を行っている株式会社集中FMエージェンシーがあります。この会社の代表を務めている阿久澤千恵氏は、前職では尾尻和紀氏の部下だったそうです。現在は尾尻和紀氏のビジネスパートナーとして事業運営に携わっています。
また、尾尻和紀氏は、神奈川県中郡大磯町や二宮町で特別養護老人ホームやグループホームの運営を行っていた社会福祉法人大磯恒道会の理事長を務めていたという経歴もあります。
神奈川県の大磯町や二宮町は海に近く比較的温暖な土地でしたので、介護用のグループホームや介護施設にぴったりの土地柄だったそうです。いつの日がふただび、高齢者向けの「理想郷」を運営する日が来るかもしれません。
ここで、尾尻和紀氏の生い立ちについてご紹介しますと、生家は瀬戸内因島にある由緒あるお寺でした。お父様は曹洞宗の高僧「監寺」ですが、すでに他界されてされています。
尾尻和紀氏は学生時代に英国へ留学した経験もあります。現在の事業につながるグローバルな視点は、海外留学によって培われたものと思われます。大学卒業後は、大日本印刷株式会社に入社し、活躍されています。

尾尻和紀氏は「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」の代表者も務めています

尾尻和紀

そして、「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」と情報誌『集中』のコラボレーション企画として、定期的な勉強会が主催されています。
定期勉強会では現在の医療業界が直面している問題や、あるいは将来医療業界に起こり得る内容をテーマに、毎回ゲストスピーカーをお招きしてお話をお伺いするというスタイルで行われています。
勉強会の内容についてはホームページ上で、当日の内容が公開されています。当日の写真も公開されていますので、勉強会の雰囲気をいつでも確認することができるようになっています。
この勉強会では、「オンライン診療」や「ロボット支援手術の法的認可」をはじめとするタイムリーな話題が多く取り上げられています。こうした最前線の話題をテーマとした勉強会を主催するといった取り組みは、
日本の医療業界のあり方や将来に向けて一石を投じるものと言えるでしょう。

医療業界を志望する人に求められること

AIに「仕事を奪われる」ということもよく話題になる医療業界。手術はロボット化が進み、診断はAIが最適解を提示してくれる。そんな時代になるかも知れません。それを踏まえて、患者さんやコメディカルとのコミュニケーション能力や、諸問題に臨機応変に対応できる柔軟さが必要といわれています。それは医師や看護師だけでなく、医療機器関係者、製薬・医薬品関係者、介護関係者など医療業界に携わるすべての人に求められるスキルです。

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また私自身の職種である医師について語ると、これまで一般的な医師は「スペシャリスト」だと思われていましたが、実際は「ジェネラリスト」的な働き方をしていました。医局に命じられて転勤し、人材の足りない病院の穴埋めをし、専門家とはいえないような雑多な仕事をする。専門知識が生かせるのは、ごく一部の病院か、大学病院に戻ったときだけというわけです。

しかしこれからの時代、わたしは医療に関わる人は誰もが本当の「スペシャリスト」であるべきだと思っています。自分の舵取りは自分でやり、人に負けない、専門的な強みを生かしていく必要があります。また、高齢化のすすむ日本では、今までよりも総合診療は重要になっていくと思われ、総合医療の「スペシャリスト」の活躍が求められるようになるかもしれません。柔軟性や先見性を持ちつつも、「誰にも負けない専門性」を兼ね備えた人材が、今後、医療だけに限らず日本の社会で活躍できるのではないかと思っています。

WEBサイトやブログによる業界研究もいいですが、書籍による研究もおすすめです。

若い健康な方々にとって医療業界は普段から慣れ親しんだ業界とは言えないでしょう。また、臨床現場や在宅医療、介護や福祉など、守備範囲が広いだけでなく、難解単語や専門用語が飛び交う少しとっつきにくい業界です。インターネットで流し読みするよりも、書籍をじっくり読み込むことで業界の仕組みやトレンドを把握することが可能です。最近ではマンガを使って分かりやすく解説してくれている書籍もあるので、まずは試しに読んでみてください。それでは医療業界研究におすすめの書籍をご紹介します。

少子高齢化の真っただ中にある日本の中で、今後ますますニーズと関与者が拡大する医療業界。専門性が高く、網羅する分野も広いため決して楽な業界ではありませんが、その分、やりがいと達成感、そしてチャレンジ精神にあふれた業界です。業界の動向や情報を集め、よく調べ、よく知ったうえで、ぜひ志望してみてください。あなたの力を発揮する場所がきっとあります。

医療業界をとりまく現状

2025年問題とは、2025年までに団塊の世代が後期高齢者に突入することにより、医療や介護において起こってくるであろう諸問題を指す言葉です。2025年というと、そう遠い未来ではありません。では、具体的に何が起こってくるのでしょうか。

2025年には、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上になると言われています。それに伴い、医療費の高騰が起き、国家財政を逼迫するようになると予測されています。また、高齢者の増加に伴い、入院のベッドや介護施設が足りなくなることが予想され、特にこの傾向は都市部で顕著になります。

高齢者1人を支える国民(生産人口)の割合

また、高齢者の増加、生産年齢人口の減少により、年金が破綻するのではとの恐れもあり、年金の受給年齢は引き上げられ、貧しい高齢者が増加するかもしれません。

国は、医療の提供を、大病院ではなく地域主体で提供するように、「地域包括ケアシステム」の構築を提唱し、現在体制作りが進められています。地域の開業医や介護事業者、市町村が連携しつつ医療、介護を提供する仕組みで、在宅医療も推進されています。しかし、地域や在宅主体で高齢者をケアする仕組みになると、家族の誰かが介護離職するリスクも大きくなっており、現在、介護離職は増えつつあります。現に、わたしの周辺でも、介護離職や、介護による勤務調整をしなければならない人がいます。医療や介護の問題のみではなく、働き方改革ともリンクする包括的な問題といえるでしょう。

また、労働人口の減少もあり、癌になった人や、介護や子育てなどのケア責任のある人々が働き続けられる働き方の構築が急務です。労働で言えば、最近の移民法の改正により、単純労働は移民の方々で置き換えられているかもしれません。現在でも、コンビニでは外国人店員が大半を占めています。

このように書くと、日本の未来は暗いようですが、IT化、自動化を進めることや、教育に力を注ぐことで、やり方によっては今後も成長が見込めると思われます。

2025年問題の先にある2040年問題

2025年問題が高齢化にともない起きてくる諸問題であると書きましたが、その先にある2040年問題は、少子化に伴う人口減少が日本を直撃することにより起きる諸問題とされています。2040年には、日本の人口は一億人を割り込み8000万人台になるといわれています。自治体の消滅可能性やインフラや国防が整備できるのかという問題、生産年齢人口の減少による国内産業の衰退などが予測されています。まさに「静かなる有事」「内なる黒船」であり、国家の根幹を脅かしかねない問題となっています。

この時代を生き延びるには、国の形を根本的に変えることが求められるでしょう。右肩上がりの時代に完成された古びたモデルはとっくの昔に賞味期限切れになっています。住む場所も含めたライフスタイルや、いかに最期を迎えるか、といった価値観にいたるまで、大きな転換をしていく必要に迫られ、また、自然に変わっていくことが予想されます。多くの人が、複数の仕事を持ち、生涯働くような働き方が主流になっていくかもしれません。そこには、「老後」という概念は既にないかもしれません。

医療が国内の一大産業に

少子高齢化の進む日本。医療費も、近年上昇する傾向にあります。高騰する医療費を今後どのように抑制していくかは喫緊の課題となっていますが、一方で国際的にはヘルスケア市場が拡大を続けており、世界での一大産業となっています。また、日本でも、2016年に日本経済再生本部で定められた「日本再興戦略」において、2013年に国内市場規模が16兆円であったのが、2020年には26兆円に達するであろうとし、また2030年には37兆円に拡大するとされています。国民の健康寿命の延長を目的とするヘルスケア産業は、わが国における成長戦略の柱になると予想され、日本のヘルスケア事業は海外でも市場を拡大していくことが予測されています。

拡大する日本のヘルスケア産業

質の高い日本の医療を海外へ売る時代へ

日本の質の高い医療。国内のみではなく海外でも「売る」時代が近い将来やってきます。外国における日本の免許の取り扱いが今後どうなるかにもよりますが、医師や看護師、介護士といった日本の医療、介護職の人々が、アジアを中心とする国外で今よりももっと活躍する時代になっていくかもしれません。現に筆者も、遠隔画像診断を通じて、微力ではありますがアジアの医療に貢献しています。日本の医療を海外に「売る」動きは、日本の病院グループや医療機関経営者においても活発になってきています。

また、ヘルスケア事業の海外市場規模は、医療機器、製薬会社をはじめとした日本企業の海外進出によってもたらされますが、欧米の企業と比較して、日本企業の世界におけるシェアは現在のところ決して高いとはいえないので、それは今後の課題と言えそうです。

製薬業界を知る、迫り来る2025年問題

2025年問題を控え様々な問題が噴出している日本の医療業界。少子高齢化、医療費の高騰、人材不足などネガティブな言葉がメディアを飛び交うなか、逆にそれは課題解決力が求められ、やりがいにあふれたチャレンジングな業界ともとらえられます。今回は現役医師で医療ジャーナリストでもある松村むつみ氏に、医療業界の現状と課題、そして未来像について教えていただきます。
わたしが医師を目指したのは、「医学を修めれば、多少なりとも世界の真実がわかるのではないだろうか」と、中学や高校の頃に思ったからです。もともと哲学書などを読むのが好きだったので、この世界に「ほんとうのこと」があるのだとしたら、是非知りたい。そのような知的好奇心がありました。しかし、なってみて思うのは、良くも悪くも、医師というのはあまり知的な職業ではないかもしれない、ということです。知力よりも体力のほうが必要とされる場面も多々あります。

医療業界とは
医療業界は、これまではやや特殊な業界だったといっても過言ではありません。他の業界の常識は医療業界の非常識のようなところがありましたし、医師のキャリアと深くかかわってくる「医局講座制」(※1)のような制度は他の業界にはありません。わたしは、親や親戚に医師がひとりもいないので、医療業界に足を踏み入れてみてその特殊な文化に驚きました。しかし最近は、医師の「労働」に対する考え方の変化や、研修医が自由に研修先を選べるようになったこと(2004年新臨床研修制度施行)により、だんだん特殊な文化が薄れ、今後もその傾向は続くように思います。
こうした医療業界が働く場所としてどのような業界なのか、市場動向や傾向から見ていきましょう。
※1:医局講座制
大学病院には診療科ごとに「医局」と呼ばれる組織、そして教育研究を行う大学医学部には「講座」という組織がそれぞれあり、国内の大学のほとんどは講座のトップである教授が診療科のトップも兼ねることが多いため、権力が集中しやすいといわれています。

近い将来、医療が日本経済を左右する重要産業に

このグラフは産業別就業者数の推移を表したグラフです。高齢化の進展で医療者は増え続け、2030年には、製造業、卸売・小売業を抜いて、医療・介護の就業者数がトップ。医療が、日本経済を左右する重要な産業になることが見込まれています。4大産業の中で唯一安定した右肩上がりの成長を見せていますが、景気の影響を受けにくい安定した業界と安穏としてはいられません。今後少子高齢化が進むことで起こる2025年問題に代表されるように日本の医療業界は過渡期に来ています。そのなかでこれから社会に出る皆さんに何ができるのか、なにがしたいのか、しっかりと見極めてみてください。

(単位:万人)
出典:「平成27年 労働力需給の推計」独立行政法人労働政策研究・研修機構

医療業界で働く人々

医療業界では、医師以外にもさまざまな人が関わっています。また医師にもいろいろな種類があり、一般によく知られている内科医、外科医、眼科医、整形外科医などのほかに、普段は患者さんに会うことなく裏方のように病院内で診断に携わる医師もいます。病理医や放射線科診断医がそれにあたり、わたしも放射線診断に日々携わりCTやMRI、PETなどで病気の診断を日々行っています。また、医師以外の、看護師、薬剤師、放射線技師、検査技師、理学療法士、作業療法士といった人々は「コメディカル」とよばれ、医師とこれら各々の職種が協力・連携して患者さんの診療に当たっています。

また病院関係者だけでなく医療業界に関連する職種まで視野を広げると、その活躍フィールドは広がります。

meeting of doctors from above

代表的なもののひとつが医療機器業界です。医療機器は大きく二つのカテゴリーに分類され、病気やケガの治療に使用される「治療系医療機器」。カテーテルやペースメーカー、人工関節などがそれにあたります。もうひとつは治療を行う前のさまざまな診断や測定を行うための「診断系医療機器」。CTやMRI、超音波画像診断装置や内視鏡などがそれにあたります。経済産業省によると市場規模は2015年度で約2.7兆円(※2)。特別大きな市場ではありませんが、常に安定した成長が見込める優良業界です。

次に製薬・医薬品業界。富士経済によると日本の医薬品市場規模/メーカー出荷ベース(※3)は2018年以降、毎年0%台後半から1%台の低成長で推移し、2024年に9兆5528億円になるとの市場予測をまとめました。医薬品は新薬とジェネリックと2つの種類に分かれ、日本ジェネリック製薬協会によるとその割合は数量ベースで、新薬:約31%、ジェネリック:約69%(※4)。国は現在、「2020年度9月末までに、後発医薬品の使用割合を80%とし、できる限り早期に達成できるよう、更なる使用促進策を検討する」(経済財政運営と改革の基本方針2017)と掲げており、ジェネリック医薬品のシェアが拡大していくことが予想されています。

このように医療機器メーカーで機器の開発に携わる。また、製薬・医薬品メーカーでの研究・開発、そしてMRになるなど、医療業界は理系・文系学生の両方に広く扉を開いています。

※2:経済産業省/我が国医療機器産業の現状より
※3:富士経済HP/医療用医薬品 国内市場調査より
※4:日本ジェネリック協会HPより