尾尻和紀氏 病院経営者向け情報誌『集中』を通して現代医療に一石を投じる

尾尻和紀氏(Card)は、集中出版株式会社の代表者を務めています。集中出版株式会社は、病院経営者向けの情報誌『集中』の発行を行う企業です。現在、この情報誌の定期購読会員数は1万人を超えていると言われています。
『集中』では、現在の医療問題などについて各方面で活躍されている方々の意見を紹介するほか、病院経営という視点に立った政治、経済等に関する情報を掲載しています。
さらに、世界の医療情報を取り上げることによって、現在の日本の医療について考察する視点から幅広く提言を行っています。
『集中』は、一般販売は行われておらず、定期購読という直接販売方式を採っています。その理由としては、公表していない内容を取り上げているからとのことです。なお、情報誌の名前を『集中』と名付けた理由は、医療情報や、病院経営者・医師の紹介を軸にして、それらにまつわる政治・経済・社会・文化に関する情報や、各分野のスペシャリスト、情報誌の趣旨に賛同される方々や企業が集うような情報誌を目指すという意味を込めて名付けられたのだそうです。『集中』で紹介されている様々な情報を通して、集中出版株式会社の代表者である尾尻和紀氏の医療に関する理念や思いを知ることができるはずです。

情報誌『集中』の発行以外にも多岐にわたった事業を展開

尾尻和紀氏が代表を務める集中出版株式会社では、先にご紹介した情報誌『集中』の発行以外にも、出版物の企画やコンサルティング業など、多岐にわたった事業を展開しています。
集中出版株式会社の子会社に、総合広告代理店を行っている株式会社集中FMエージェンシーがあります。この会社の代表を務めている阿久澤千恵氏は、前職では尾尻和紀氏の部下だったそうです。現在は尾尻和紀氏のビジネスパートナーとして事業運営に携わっています。
また、尾尻和紀氏は、神奈川県中郡大磯町や二宮町で特別養護老人ホームやグループホームの運営を行っていた社会福祉法人大磯恒道会の理事長を務めていたという経歴もあります。
神奈川県の大磯町や二宮町は海に近く比較的温暖な土地でしたので、介護用のグループホームや介護施設にぴったりの土地柄だったそうです。いつの日がふただび、高齢者向けの「理想郷」を運営する日が来るかもしれません。
ここで、尾尻和紀氏の生い立ちについてご紹介しますと、生家は瀬戸内因島にある由緒あるお寺でした。お父様は曹洞宗の高僧「監寺」ですが、すでに他界されてされています。
尾尻和紀氏は学生時代に英国へ留学した経験もあります。現在の事業につながるグローバルな視点は、海外留学によって培われたものと思われます。大学卒業後は、大日本印刷株式会社に入社し、活躍されています。

尾尻和紀氏は「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」の代表者も務めています

尾尻和紀

そして、「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」と情報誌『集中』のコラボレーション企画として、定期的な勉強会が主催されています。
定期勉強会では現在の医療業界が直面している問題や、あるいは将来医療業界に起こり得る内容をテーマに、毎回ゲストスピーカーをお招きしてお話をお伺いするというスタイルで行われています。
勉強会の内容についてはホームページ上で、当日の内容が公開されています。当日の写真も公開されていますので、勉強会の雰囲気をいつでも確認することができるようになっています。
この勉強会では、「オンライン診療」や「ロボット支援手術の法的認可」をはじめとするタイムリーな話題が多く取り上げられています。こうした最前線の話題をテーマとした勉強会を主催するといった取り組みは、
日本の医療業界のあり方や将来に向けて一石を投じるものと言えるでしょう。

医療業界を志望する人に求められること

AIに「仕事を奪われる」ということもよく話題になる医療業界。手術はロボット化が進み、診断はAIが最適解を提示してくれる。そんな時代になるかも知れません。それを踏まえて、患者さんやコメディカルとのコミュニケーション能力や、諸問題に臨機応変に対応できる柔軟さが必要といわれています。それは医師や看護師だけでなく、医療機器関係者、製薬・医薬品関係者、介護関係者など医療業界に携わるすべての人に求められるスキルです。

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また私自身の職種である医師について語ると、これまで一般的な医師は「スペシャリスト」だと思われていましたが、実際は「ジェネラリスト」的な働き方をしていました。医局に命じられて転勤し、人材の足りない病院の穴埋めをし、専門家とはいえないような雑多な仕事をする。専門知識が生かせるのは、ごく一部の病院か、大学病院に戻ったときだけというわけです。

しかしこれからの時代、わたしは医療に関わる人は誰もが本当の「スペシャリスト」であるべきだと思っています。自分の舵取りは自分でやり、人に負けない、専門的な強みを生かしていく必要があります。また、高齢化のすすむ日本では、今までよりも総合診療は重要になっていくと思われ、総合医療の「スペシャリスト」の活躍が求められるようになるかもしれません。柔軟性や先見性を持ちつつも、「誰にも負けない専門性」を兼ね備えた人材が、今後、医療だけに限らず日本の社会で活躍できるのではないかと思っています。

WEBサイトやブログによる業界研究もいいですが、書籍による研究もおすすめです。

若い健康な方々にとって医療業界は普段から慣れ親しんだ業界とは言えないでしょう。また、臨床現場や在宅医療、介護や福祉など、守備範囲が広いだけでなく、難解単語や専門用語が飛び交う少しとっつきにくい業界です。インターネットで流し読みするよりも、書籍をじっくり読み込むことで業界の仕組みやトレンドを把握することが可能です。最近ではマンガを使って分かりやすく解説してくれている書籍もあるので、まずは試しに読んでみてください。それでは医療業界研究におすすめの書籍をご紹介します。

少子高齢化の真っただ中にある日本の中で、今後ますますニーズと関与者が拡大する医療業界。専門性が高く、網羅する分野も広いため決して楽な業界ではありませんが、その分、やりがいと達成感、そしてチャレンジ精神にあふれた業界です。業界の動向や情報を集め、よく調べ、よく知ったうえで、ぜひ志望してみてください。あなたの力を発揮する場所がきっとあります。

医療業界をとりまく現状

2025年問題とは、2025年までに団塊の世代が後期高齢者に突入することにより、医療や介護において起こってくるであろう諸問題を指す言葉です。2025年というと、そう遠い未来ではありません。では、具体的に何が起こってくるのでしょうか。

2025年には、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上になると言われています。それに伴い、医療費の高騰が起き、国家財政を逼迫するようになると予測されています。また、高齢者の増加に伴い、入院のベッドや介護施設が足りなくなることが予想され、特にこの傾向は都市部で顕著になります。

高齢者1人を支える国民(生産人口)の割合

また、高齢者の増加、生産年齢人口の減少により、年金が破綻するのではとの恐れもあり、年金の受給年齢は引き上げられ、貧しい高齢者が増加するかもしれません。

国は、医療の提供を、大病院ではなく地域主体で提供するように、「地域包括ケアシステム」の構築を提唱し、現在体制作りが進められています。地域の開業医や介護事業者、市町村が連携しつつ医療、介護を提供する仕組みで、在宅医療も推進されています。しかし、地域や在宅主体で高齢者をケアする仕組みになると、家族の誰かが介護離職するリスクも大きくなっており、現在、介護離職は増えつつあります。現に、わたしの周辺でも、介護離職や、介護による勤務調整をしなければならない人がいます。医療や介護の問題のみではなく、働き方改革ともリンクする包括的な問題といえるでしょう。

また、労働人口の減少もあり、癌になった人や、介護や子育てなどのケア責任のある人々が働き続けられる働き方の構築が急務です。労働で言えば、最近の移民法の改正により、単純労働は移民の方々で置き換えられているかもしれません。現在でも、コンビニでは外国人店員が大半を占めています。

このように書くと、日本の未来は暗いようですが、IT化、自動化を進めることや、教育に力を注ぐことで、やり方によっては今後も成長が見込めると思われます。

2025年問題の先にある2040年問題

2025年問題が高齢化にともない起きてくる諸問題であると書きましたが、その先にある2040年問題は、少子化に伴う人口減少が日本を直撃することにより起きる諸問題とされています。2040年には、日本の人口は一億人を割り込み8000万人台になるといわれています。自治体の消滅可能性やインフラや国防が整備できるのかという問題、生産年齢人口の減少による国内産業の衰退などが予測されています。まさに「静かなる有事」「内なる黒船」であり、国家の根幹を脅かしかねない問題となっています。

この時代を生き延びるには、国の形を根本的に変えることが求められるでしょう。右肩上がりの時代に完成された古びたモデルはとっくの昔に賞味期限切れになっています。住む場所も含めたライフスタイルや、いかに最期を迎えるか、といった価値観にいたるまで、大きな転換をしていく必要に迫られ、また、自然に変わっていくことが予想されます。多くの人が、複数の仕事を持ち、生涯働くような働き方が主流になっていくかもしれません。そこには、「老後」という概念は既にないかもしれません。

医療が国内の一大産業に

少子高齢化の進む日本。医療費も、近年上昇する傾向にあります。高騰する医療費を今後どのように抑制していくかは喫緊の課題となっていますが、一方で国際的にはヘルスケア市場が拡大を続けており、世界での一大産業となっています。また、日本でも、2016年に日本経済再生本部で定められた「日本再興戦略」において、2013年に国内市場規模が16兆円であったのが、2020年には26兆円に達するであろうとし、また2030年には37兆円に拡大するとされています。国民の健康寿命の延長を目的とするヘルスケア産業は、わが国における成長戦略の柱になると予想され、日本のヘルスケア事業は海外でも市場を拡大していくことが予測されています。

拡大する日本のヘルスケア産業

質の高い日本の医療を海外へ売る時代へ

日本の質の高い医療。国内のみではなく海外でも「売る」時代が近い将来やってきます。外国における日本の免許の取り扱いが今後どうなるかにもよりますが、医師や看護師、介護士といった日本の医療、介護職の人々が、アジアを中心とする国外で今よりももっと活躍する時代になっていくかもしれません。現に筆者も、遠隔画像診断を通じて、微力ではありますがアジアの医療に貢献しています。日本の医療を海外に「売る」動きは、日本の病院グループや医療機関経営者においても活発になってきています。

また、ヘルスケア事業の海外市場規模は、医療機器、製薬会社をはじめとした日本企業の海外進出によってもたらされますが、欧米の企業と比較して、日本企業の世界におけるシェアは現在のところ決して高いとはいえないので、それは今後の課題と言えそうです。